BCP策定メソッド
第五回 復旧を加速する
災害関連死を防ぐために早期復旧を計画してみましょう。
過酷な環境による過労やストレスと持病の悪化等が重なった結果、せっかく生き延びた命を失うのは大変に惨く辛いことです。ご利用者を災害関連死から守るためには、「事前」の取り組みがより重要です。
①福祉避難所と特例措置
~介護施設は避難者受け入れを前提に考えてみる
「福祉避難所」は避難生活が長引いた際、高齢者など避難所生活に特別な配慮が必要な方とそのご家族を受け入れるために自治体が開設要請します。自治体と福祉避難所の協定を結んでいる介護施設は、開設・運営マニュアルを必ず整備してください。どのようなマニュアルを整備すべきか、避難対象者と合わせて自治体に確認しておきましょう。また、居宅系サービス事業所については、事業所が福祉避難所に指定されていなくても、ご利用者が福祉避難所の対象者となっている場合があります。
なお、発災直後には、小・中学校等の「指定避難所」へ地域住民等は避難することになっています。しかし、夜間に発生した熊本地震では、地域全体が停電し、灯りが確保されている介護施設に避難する事例がありました。本来、指定避難所へ避難すべき人々が介護施設に集まることを想定しておくべきです。
もう1つ、過去の大災害発生時に発令された「特例措置」を学んでおくことも重要です。熊本地震では、特例入所や超過入所に関する事例があります。ほかにも、一般の避難所での介護サービス提供や緊急ショートステイ対応も命を守る有効な手段です。様々な状況を想定して対策を事前に講ずる仕組みを作り、関係者と打ち合わせを重ねていきましょう。
②個別避難計画と避難行動要支援者
~施策との連動でより効果的な方向性を見出す
私たちが介護サービスを提供しているご利用者の多くが、避難行動要支援者に該当します。例えば、デイサービスご利用中に大地震が発生した場合の、ご利用者の避難行動が、個別避難計画に含まれてくるはずです。訪問系サービスにおいては、訪問中だけでなく訪前後の個別避難計画の内容も想定し、BCP策定に盛り込んでいくことが望まれます。
■図表個別避難計画(兵庫県の例)
③連携
~介護事業所間の連携、地域や災害ボランティアの存在
熊本地震では、被災されたグループホームのご利用者と職員がグリーンヒルみふねへ避難されたケースが実際にありました。ただし、大規模災害では同一地域の同時被災が予想されるので、より広域な事業所間の連携を検討します。
また、「地域」や「災害ボランティア」も、被災した介護サービス事業所や職員の力になります。平時からマンパワーの確保には大変な苦労をされている現場は少なくないはずです。それが、災害時にはより一層、不足することは容易に想像できます。
ですから、例えば介護サービス事業所の片づけ、清掃、整理・整頓、見守り、話し相手、支援物資の受け入れ、災害廃棄物の処理、情報伝達、炊き出し等を地域や災害ボランティアに支援してもらってはどうでしょう。
さらに、職員も被災者なので、職員の自宅の片づけ、掃除、整理、災害廃棄物の搬出や運搬・処理、支援物資の配達、留守中の自宅の見守り、被災に関する申請書類の作成代行や提出、地域や避難所の情報収集とその伝達等を支援してもらうことも考えられます。
介護サービス事業所が早急に復旧、復興するためにも、地域や災害ボランティアの支援を活用した「職員支援プログラム」をぜひ、準備してください。大規模災害では避難生活が長引くケースが多数あります。事業所として被災職員をしっかりとサポートしましょう。
*第五回まとめ*
繰り返しとなりますが、復旧を加速することは、「人の命」を守るために重要なポイントです。待っていても復旧は滞るばかりです。平常時の準備から復旧加速を意識することが大切です。
次回は最終回「システムとして「機能させる」です。